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まだ五月だというのに真夏日を記録した日の午後遅く、気付けば、得体の知れない不安が胸中に巣食っていた。それは真っ黒けなガス体でつかみどころがないのだが、妙に湿っていて重たく、なぜか身体を裏返そうとしてくる。私は裏返されまいと必死で身体を抑えなければならない。だから、営業車の運転日報の入力やガソリン代の精算、営業先からの宿題に取り掛かることはできない。このように私の業務が滞ったせいで、庶務や経理やメンテナンス部にしわ寄せがいき、それらがめぐりめぐって、私が社屋から蹴りだされることになるのかもしれないと思う。それは不安に似ている。そう思った瞬間、私は不安の原因を思い出した。
昼食のためコンビニの駐車場に入ったとき、入れ違いに出ていった軽自動車の、後ろに貼ってあったステッカーが、バックミラー越しに見えた。
「てぶくろが乗っています」
それがこの不安の得体だったのだ。今も、不安は継続している。
昼食のためコンビニの駐車場に入ったとき、入れ違いに出ていった軽自動車の、後ろに貼ってあったステッカーが、バックミラー越しに見えた。
「てぶくろが乗っています」
それがこの不安の得体だったのだ。今も、不安は継続している。
その他
公開:24/05/22 21:27
新出既出です。
twitterアカウントでログインしておりましたが、2019年末から2020年年初まで、一時的に使えなくなったため、急遽アカウント登録をいたしました。過去作は削除してはおりませんので、トップページの検索窓で「新出既出」と検索していただければ幸いです。新出既出のほうもときおり確認したり、新作を挙げたりします。どちらも何卒よろしくお願いいたします。
自己紹介:「不思議」なことが好きです。
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