「あ」清掃員

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「あ、はい。」
「あ、すみません…」
「あ、カードで…」
「あ、大丈夫です。」
「あ…」「あ…」「あ…」

7…俺は数えながら「あ」のゲシュタルト崩壊を起こしつつ、床に落ちた「あ」を箒でちりとりに集めた。俺の仕事は「あ」清掃員だ。人が無意識に口から零す「あ」を只管掃除している。仕事は結構ハードだ。今日の現場は百貨店。会話が多い場所な分、夥しい量の「あ」の掃除に苦戦していた。
「ああああ…」ちりとりもゲシュタルト崩壊を起こして叫び出した。俺はついに参ってため息をついた。
「おいさっき掃除したのに」
同僚の声に、ウィーン…機械の音。驚いて横を見ると同僚が機械で俺のため息を吸い取っていた。彼はため息清掃員だった。
「あ、ごめん。」
「おい、落ちたぞ。」
謝る俺の足元を同僚が指差した。床には…1枚の「あ」

「あ…。」

俺は2枚になった「あ」を箒で掃いた。
ちりとりがまた「ああ…」と叫び始めた。
その他
公開:24/05/24 09:11
#無意識 #ゲシュタルト崩壊 #無意識清掃員シリーズ

板里カエ( 静岡 )

いたりかえです。空想と創造の毎日です。

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