地図のない町

私の人生は動物とともにある。
両親が動物大好きで、私が生まれる前から家には犬や猫がいた。だから家に犬や猫がいない生活の方が私にとっては考えられない。家に動物がいるのは当たり前だった。
だけど私が一人暮らしを始める頃、両親は高齢故にペットの飼育に悩んでいた。
衰えた体力で毎日犬の散歩に行けるだろうか？猫の我が儘に付き合っていけるだろうか？
そんな不安から、動物を飼うのをやめようとしていた。
私は両親に地図のない町への移住を勧めた。
この町に住む動物は長寿であり大きい。背中に人が暮らせる家を持つ。そこで暮らしてみてはどうだと提案した。
家が歩き回るんだ。住所なんて意味ないし、地図なんて必要ない。
そんな町を訪れた両親。すぐに家主のいない犬に懐かれ、移住を決めた。
散歩が大好きな犬居に大満足の両親。
時折、散歩がてら私の住む猫居に遊びに来る。
日向ぼっこをする猫の額でお茶をするのが楽しみである。