孫の手　～悪き祖母の体験～

日常をサポートしてくれる多機能型孫の手。
最初はその性能を疑っていたけど、日常のあらゆる事をやってくれる孫の手はいつしか私の生活になくてはならないものになった。
私の身の回りの事を全部やってもらうんだ。孫の手一つじゃ足りない。１つ５万円もする高級品だが、あと１０個追加購入した。
私の生活はこれで安泰…の、はずだった。
最初に、昔から使っていた孫の手がなくなった。なくなったものは仕方がない。９本の孫の手に家事を命じた。
１本は私のお気に入り。この孫の手とは一緒にスマホで映画やドラマを見た。
するとどうした事か、日に日に孫の手がなくなっていく…もしや窃盗か？
『それは孫の手を孫差別した事による孫の手の家出ですね。孫の手はなくなったんじゃなくて、いなくなったんですよ』
警察からの説明に愕然とする。仕方ない…残ったこのお気に入りを今からこき使うとしよう。
数分後。お気に入りの孫の手もいなくなった。