知らない男の子

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何十年ぶりかで、地域の実家に帰省した空十郎さん。実家は明治時代から続く、地域の有力な家だ。
増築や改築はしたが、古い家で、今でも縁側(えんがわ)がある。
空十郎さんが庭を歩くと、そこに見知らぬ子どもがいた。
声を掛けようとすると、家の中から空十郎さんの甥、今の家の主人が出てきて「勝手に入ってはダメ」と言って、その子どもを追い出してしまった。
何でも最近は家のセキュリティ管理を厳しくしたのだという。

追われた男の子は、じっと空十郎さんの顔を見ていたが、寂しそうに、どこかへ出て行った。
「おや、あの子は僕が小さい頃、遊んだことがある」と空十郎さんは思った。
昔は近所の子どもたちが平気で家に出入りし、自由に家で遊んだものだった。

誰もいない縁側を見て、彼は何だか寂しい気になった。
と同時に、ふと「この実家はこれからも無事でいられるだろうか」と、なぜかとても不安な気持ちが、わき起こってきた。
ファンタジー
公開:24/05/19 17:58
更新:24/05/19 18:07

tamaonion( 千葉 )

雑貨関連の仕事をしています。こだわりの生活雑貨、インテリア小物やおもしろステーショナリー、和めるガラクタなどが好きです。

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