まちの本屋

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『大林書店の本は面白い』とのポスターが目に止まる。
十坪程の小さなまちの本屋は客で混み合っていた。
見ず知らずの男性が「驚きました。本当にここの本は面白いんですよ」と見慣れぬ作家の本を手に取った。
「いや、本なんて何処で買っても同じ内容に決まってるじゃないですか」
相手は待ってましたとばかりの表情で「私も最初はそう思いましたよ。でも実際読み比べてみたら断然ここの本が面白いんですよ。コレなんてもう犯人が違うんです。でもその方が動機に矛盾が無くて良いんです」
「嘘でしょう」答えを探して店内を見回す。
「近くに大型店が出店し、ただでさえ厳しいまちの本屋は必死なんですよ。恐らく店主の本を愛する気持ちが本に伝わったんですよ」
「まさか本が自力で面白くなったとでも」
「説明が追いつかない世界を楽しめるかです」と男性は同じ作家の本を何冊も抱えている。
「まさかあなたは」
本の作者は笑顔でレジに向かった。
SF
公開:24/05/18 23:12

吉田図工( 日本 )

まずは自分が楽しむこと。

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