名画でショート13『ヴォルガの船曳き』(イリヤ・レーピン)

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川沿いを歩く彼らの顔は浅黒く、まさに死人のようだった。
ボロきれを身にまとった奴隷たちには太い帯が括り付けられており、その先には巨大な帆船が繋がっている。
彼らは船曳きだ。川を下った帆船を、粗末な黒パンとウォッカだけで、彼らが何日もかけて上流へと引き上げる。
船曳きに他の生き方は許されていない。社会の最下層として、ロボットのように、くる日もくる日も、船を曳き、黒パンを食べ、ウォッカを飲み、夜に草むらで寝て朝になるとまた船を曳く。
帆船が上流までたどり着くと、上流階級の人々を飲み込み、優雅に出発する。船曳きたちは帆船を追いかけ、停止すると、また上流へと船を曳き始める。
このくり返し。終わりはない。
それにしても、支配者たちはなぜ、彼らに無駄な作業をさせるのだろうか。これが人類への罰だというのだろうか。
ロボットが支配するこの世界で。
その他
公開:24/05/18 09:07

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