憑りついた幽霊の可視化手術

手術の終わった私に、先生が鏡を見せてくる。
鏡に写った姿を見て、私は感激のあまり涙した。
１年前。私は大きな事故に遭い、命と同じくらい大切な髪を失った。
母譲りの、烏の濡れ羽色の黒髪。自慢だったそれを失い、私は絶望した。
そんな時、霊感のある先生が私に言った。
「君の髪、毛根は確かに死んでしまっている。でも、霊魂は生きている。よっぽど大切にしていたんだね。君の黒髪は、守護霊となって君の頭に憑りついているよ」
次いで先生は私に幽霊の可視化手術を進めてきた。そして今に至る。
見えるだけじゃない。触れられる。大切な髪の毛が戻ってきた。
「その髪の毛は本物の髪の毛ではない。大切にするなら、シャンプーやトリートメントを毎日お供えする様に」
先生の言葉に何度も頷く。感謝の言葉を告げる。
「それじゃ、これで失礼するよ。私もお供えの時間なのでね」
先生はそう言うと懐から目薬を取り出し、それを眼前に供えた。