小瓶の生き物
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彼にはいつも肌身離さず持っている小瓶がある。それは大きさ五センチほどのもので、その小瓶にはある生き物が入っているのだ。彼はそれを毎日上着の内ポケットに入れて持ち歩いていて、時々取り出しては生き物の様子を確認し、満足げな表情を見せる。時には生き物にパンくずを与えたり、水を吸わせたスポイトで口を湿らせてやるのだ。仲間はそんな彼をよくからかっていた。
「それが死んでしまったら本当にきみも死んでしまうのではないか」
「あるいはそうかもしれないなあ」
そう笑いながら、生き物のことでからかわれることさえ彼にとって喜びであるように思われた。
ある日、彼のことを知らない男が小瓶の生き物に執している彼を見て訝しげに聞いた。
「それは一体何だ?」
彼が答えに窮していると男はしつこく食い下がり、ついには困り果てた彼から半ば奪い取るように小瓶の生き物を持ち去ってしまった。
翌日、男は気が狂ってしまった。
「それが死んでしまったら本当にきみも死んでしまうのではないか」
「あるいはそうかもしれないなあ」
そう笑いながら、生き物のことでからかわれることさえ彼にとって喜びであるように思われた。
ある日、彼のことを知らない男が小瓶の生き物に執している彼を見て訝しげに聞いた。
「それは一体何だ?」
彼が答えに窮していると男はしつこく食い下がり、ついには困り果てた彼から半ば奪い取るように小瓶の生き物を持ち去ってしまった。
翌日、男は気が狂ってしまった。
その他
公開:24/05/21 21:04
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