エンドレス水たまり

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やまない雨はないと言うけど、梅雨でもないのに毎日しとしと雨が降っている。
すこしでも気分を上げないと憂うつでたまらないので、素敵な傘を求めて、職場の先輩から教えてもらったカラカサ商店街に足を運んだ。

都会のはずれにあるその町には、名水百選にも選ばれたきれいな水が川となって流れている。聞いた話ではかつて材木業を主として発展した土地だったらしい。適当にのぞいたいくつかのちいさな店には、木製の柄でつくった手作りの傘が並んでいた。プラスチック製のお手軽なお値段の傘しか使ったことがない私は、技術力の高さより先に、予算を遥かに超えたお値段に圧倒されてしまった。

手ぶらで帰る道にはたくさんの水たまりができていた。まるでいまの仕事の未来を見ているようだと思った。水かさが増した川はどうどうとうなり声をあげている。私は背中を押されたように傘作り職人の門をたたいた。
その他
公開:24/05/22 09:00

いちいおと( japan )

☆やコメントありがとうございます✨
以前のアカウントにログインできなくなってしまい、つくりなおしました。

清流の国ぎふショートショート文芸賞 入選

ときどき短編〜長編も書いています(別名義もあります)

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