発明の効果

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 世の中を上手く回すコツは、ある一方の課題の解決が、同時に他方の解決にもなるような、二つの問題を探してくることである。

 私の発明の場合それは、とある需要に対し、別なる供給を以てこれを満足させる事であった。むろんその効果の絶大なることは、昨今至る所で見て取れる―

「俺たちは運が良かったよ、こんなかわいい子で・・・名前、もう決めた?」
「うん・・・ねえ、ごめんね。私の体の所為で・・・」
「泣くなよ・・・気にしてないよ、そんなこと。やっぱり名前の一部くらいは、残してあげる?」

涙を吸ったチリ紙で女は鼻をかみ、丸めて屑籠へ投げ入れた。
「・・・どうかな、私達のおかげでもう一度、人生を経験できるのに、名前まで必要かな?」
「そうだよね、俺もそう思ってた・・・」

 断っておくが、私の薬にとって「需要」とは、「子の出来ない夫婦」であり、供給とは「身寄りのない老人」、それ以上でも以下でもない。
その他
公開:24/05/13 23:19

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