サンタクロース

　初夏、河川敷。サンタの群れがバーベキューをしていた。
　俺は「ああ、サンタもバーベキューってすんねや。」そんなことを思った。直後、この場所がバーベキュー禁止であることを思い出した。看板にも明記してある。確かサンタの出身は北欧だったか、だから日本語が読めずここでバーベキューをしてしまったのか。そうであれば彼らはむしろ日本という環境の被害者なのではないだろうか。
　仕方がない、ここで俺が彼らのためにバーベキュー禁止ということをしっかり伝えよう。そして彼らにルールを遵守することの素晴らしさを諭してこよう。なんて有意義なんだ。無職の俺にまだこんな有意義なことが残されていたなんて。
　俺は颯爽と集団に駆け寄り、「ノーバーベキューヒア！！」と叫んだ。
　するとサンタの一人が困惑しつつも肉や野菜が刺さった串を俺に差し出してきた。

　「食べますか？」
　
　俺はその日、赤色のTシャツを着ていた。