The Red Violin ver.sees

　イタリアの名工が制作したとされる"RED"は、鮮血のような深紅の塗装が施され、奏者を操り、聴衆を魅了し、所持者に莫大な利益をもたらす名器とされた。しかし…所持者は謎の死を遂げる逸話も多く存在した。

　最初の所持者である貴族は、顔を洗面器に沈めて溺死し…次に所持した演奏家は単発銃を眉間に撃ち込み…次に所持した楽器収集家は家に火を放ち、コレクションと共に焼死した…。

　4世紀後…日本の美術館に出展されたREDは、大学の研究対象とされ…そこで…人々はREDを知った。弦に触れた演奏初心者の学生は割腹自殺をし、素手でペグに触れた学生は4階から飛び降りた。混乱は続いた。REDの深紅の塗装の成分に、何百人分ものヒトの血と髪と体液のDNAが発見されたのだ…。
　
　数日後、REDは大学から盗み出され…関係者たちも次々と行方知れずとなり…残されたREDの音色が収録されたCDは、今も倉庫で眠っている…。