記憶を味覚に

2
2

皆さんは新聞紙から水を出すマジックを見たことがあるだろうか。私は子供の頃それをテレビで見た。当時の小賢しい私はどんなタネがあるんだろうと勘ぐったものだった。しかし大人になって気付いたんだ。あれは本当に魔法だったのだと。
それがわかってから自然と紙から水を出すことが出来るようになっていた。しかも紙を変えると出てくる水の種類も変わるようだ。白い画用紙を丸めたら牛乳が出てきたし、私の黒歴史ノートを丸めたらコーヒーが出て来た。
これは面白い。せっかくだから今飲みたいビールを出してみよう。私は色々な紙を丸めて色々な水を出した。その結果意外なことに初めて書いた恋文からビールが出てきた。実をいうとこの恋は実らなかった。当時としては苦い出来事だったが、今となれば良き思い出だ。あぁ、そうか。出てくる飲み物には皆ストーリーがあるんだ。きっとその意味を味覚で伝えてくれているんだ。じゃあきっとこのビールはうまい。
SF
公開:23/11/06 21:46

リマウチ

超ショートショート書いていきます

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容