Rainbeer

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ある年を境に、虹がビールの色になった。
大麦の国と小麦の国が戦争を始めたから。炭酸ガスが大気飽和量を超えたから。不純物だらけの海が発酵したから。地球も一杯やりたいほど夏が熱過ぎるから。学者は様々な説を並べたが、結局正解は分からなかった。
虹のスペクトルは金から黒の間で分光し、国や産地により好きな種類や銘柄で呼ばれた。メーカーや工房は虹にちなんだクラフトビールを造り、トレンドや販売シェアに応じて虹の色も細分化あるいは統合された。極地ではビール色のオーロラが夜空に揺れ、太陽も月もビール色の暈を差した。昼も夜もビール色に染まる街で、人々は激昂し陶酔し狂乱し、騒ぎ疲れて眠りについた。

やがて空からビールの雨が降り出した。
煤煙と放射能に燻された雫が海を叩き、海面はビール色に泡立った。
丸ごとビールに沈む世界の底で、泥酔する骸骨たちがビール色の彗星を見上げる。
遥か地表で――チン、と乾杯が響いた。
SF
公開:23/11/06 11:39

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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