ノスタルジックください

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何でも屋の俺の所にやってくるのは変な客ばかり。そんな中でも今晩来た彼女は特に珍客だ。
『あの、ノスタルジックください』
店の戸をガラガラと開けて現れた彼女は開口一番そう言った。
『えっと、ノスタルジックっていうのは、どういう類いの?』
『ここって、何でも屋さんですよね』
彼女は『まさか無いなんて言わせませんよ』と言わんばかりの圧をかけてくる。
『私の青春。あの思い出を甦らせて欲しいんです。自由で、ほろ苦くて、ちょっぴり甘酸っぱかった、私の大学時代の記憶を』
そういう事か。俺はグラスを二つ用意し、特別な日用に取っておいたクラフトビールを注ぐと、彼女に一つ手渡し、チンとグラスを合わせた。
『お待ちどうさま。ノスタルジック一つ。今夜は語り明かしてください』
キョトンとしていた彼女だったが、やがて可笑しさが込み上げたように笑うと、ゆっくり語りだした。
『そうね、あれは初めてサークルに入った時よ』
その他
公開:23/11/09 08:43
更新:23/11/09 08:56

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