祖父専用ビール

最近祖父がアルバイトを始めた。今日もビールを飲んだ後、アルバイトへ出かける。
お酒を飲んで仕事に行くなんて、大人としてどうかと思う。
「このビールはな、爺ちゃんの仕事に必要なものなんじゃよ」
飲酒が必要な仕事って何だろう？祖父も両親も、それに答えてはくれなかった。
祖父はこのビールを誰にも渡さない。手に取るだけで怒るし、怒られた事もある。
酒は人を変える。それを目の当たりにした。
孫にトラウマを植え付けてしまった…そんな負い目からか、祖父はビールの秘密をこっそり教えてくれた。
目の前でビールを飲む祖父。
少しするとその身体は風船みたく膨れ、口の周りには泡のようなもこもこの真っ白な髭が生えてきた。
「このビールはな、爺ちゃんをサンタクロースに変えてくれる特別なビールなんじゃ」
祖父が指をパチンと鳴らす。ビールの缶がトナカイ付きのソリへと早変わり。
ビールは人を変える。それを目の当たりにした。