インペリアルスタウト

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360度、どこまでも続く砂漠に赤い絨毯が遠くまで敷かれていて、僕はその上を歩いていた。
絨毯の上は踏み外せない。なぜならいかにも「悪さをしますよ」と言わんばかりのトゲトゲで、白く光り点滅する葉が、絨毯の淵に立った途端ニュッと顔を出すからだ。

暑くてクラクラしてきたので、真ん中辺りにそーっと腰を下ろして寝転ぶ。日差しが強くて首に巻いたタオルを外して顔にかけた。汗臭いのはこの際仕方ない。

不意に風が吹き、気持ちいいと思うと同時に、タオルが飛んでいった。咄嗟に手を伸ばすが届かない。慌てて立ち上がり追いかけた拍子に、足が絨毯を踏み外し、砂を踏んでしまった。

やばい、草に襲われる、と思いきや、そいつらは白いあぶくのようなものを放出し、瞬く間に増えて細かく波になり、僕をさらった。

漂うホップの香り。初めから心配する必要はなかった。波は目的地の砂漠のオアシス、金の御殿へと運んでくれたのだから。
SF
公開:23/11/08 19:56

綿津実

自然と暮らす。
題材は身近なものが多いです。

110.泡顔

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