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また、オーディションに落ちた。
大学の演劇部から始まった役者人生。その歩みを銀幕に映し出したら、銀幕はきっと黒幕になるだろう。…急に悪い奴になったな。落ち込みながらもくだらない事を思いつく自分に嫌気がさし、僕は映画館へ憂さ晴らしに行った。
レイトショーの劇場は人がまばらだ。号泣したくて選んだ映画も感動的で、予定通り人目を気にせず泣いていると妙な事が起きた。誰かが僕の脇腹をくすぐったのだ!堪え切れず大笑いした僕へ、不快感を表す咳払いが聞こえてくる。恥ずかしさに座席で小さくなると子供の笑い声がした。
後に知ったのだが、あの劇場には座敷童子ならぬシネマ童子がいるらしい。出会えば幸運が舞い込むという事も。

「最後に、令和の喜劇王が演じる際に大切にしている事は?」

「そうだな…」

あの日の映画館での出来事が蘇る。

「劇場に住みつく悪戯っ子を大笑いさせて、仕返ししてやろうって気持ちかな。」
ファンタジー
公開:23/11/03 12:57
更新:24/11/03 15:46
月の音色 映画館での出来事 若干修正

ネモフィラ(花笑みの旅人)( 気の向くまま )

読んでくれてありがとう!

 

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