私の夢遊病

医者から夢遊病だと診断された。それに納得する。
私は自他ともに認めるリアリスト。夢は見ない。希望的観測はしない。
子どもの頃から勉強ばかりで遊んだ記憶なんてない。おかげで私は首相になれた。後悔はない。
私の政策に遊びはない。不必要な法案は全て撤廃し、無駄な法律はすぐに改正させた。
それで割を食う者も出てくるだろう。だが私からすれば、遊ぶ金欲しさに他人を苦しめるなんて言語道断。
完全実力主義社会に舵を切り、実績を重視した。
そんなつまらない私に夢が愛想を尽かし、出て行った。それ以来、私は睡眠時夢を見なくなった。
それを話したところ、医者に夢遊病だと診断された。
私の夢は私に代わって遊びに出ているそうだ。
私の夢は常に遊びを求めているらしく、老若男女問わず私の姿で夢の中に現れる。
夢の中で「遊ぼうよ」と声をかけてくる男。それが私だ。
私の夢は、私の死後も他人の夢の中に現れては遊びを求めている。