幸福感染症

自身の幸せが、第三者にもうつる。幸福感染症と呼ばれるそれが見つかったのは今から十数年前の話だ。
人に優しくすると、自分も優しくされた人も嬉しくなる。その程度なら問題なかった。
しかし、幸福感染症は宗教にのめり込む事を幸福とする者によって、悪意あるばら撒き方をされてしまった。
その宗教団体はこれで信者が増えると思っていたのだろう。だが、死を幸福に感じる信者がいた為、この宗教団体内で集団自殺が起こってしまった。しかもそれは、この国全土へと行き渡ろうとする。
政府は急ぎ、幸福感染症ワクチンを作り、それを全国民へと投与した。幸福感染症は徐々にではあるが収束を始めた。
今では幸福感染症は怖い病気でないと皆が思うようになった。
そもそも人に親切にして感じるこの幸福が、感染症によるものか自身の心持によるものか判断ができなくなっている。
with幸福感染症を掲げたこの国は、幸福に対し疑心暗鬼を抱いている。