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モルト城の酒宴で、ブルワー王子はある缶ビールに一舌ぼれをなさいました。
「これまで数多のビールを飲んだが、かの缶こそ我が晩酌に相応しい」
よほどの高級クラフトビールに違いない。お抱えの職人に缶の残したプルタブを託し、ぴったり合う飲み口を探し出すよう命じられました。
国中のビールが黄金に色めき立ち、我こそはと名乗り出たものの、タブに合う缶は見つかりません。環境と安全面から国内のビール缶はステイオンのタブに変わり、プルトップ式のタブは製造されないのです。無理に合わせようと取れないタブをねじ切り、飲み手と己を傷付ける缶まで出る始末。
もう二度と味わえないのか。ヤケビールを飲んだくれる王子に何者かが囁きます。
「飲み過ぎはお身体に毒ですわ」
この優しい口当たり。宴の晩もそう言って、真夜中の鐘と共に去った缶が、開いた飲み口で微笑んでいます。
「あなたの銘柄は?」
「輸入ノンアルビールでございます」
「これまで数多のビールを飲んだが、かの缶こそ我が晩酌に相応しい」
よほどの高級クラフトビールに違いない。お抱えの職人に缶の残したプルタブを託し、ぴったり合う飲み口を探し出すよう命じられました。
国中のビールが黄金に色めき立ち、我こそはと名乗り出たものの、タブに合う缶は見つかりません。環境と安全面から国内のビール缶はステイオンのタブに変わり、プルトップ式のタブは製造されないのです。無理に合わせようと取れないタブをねじ切り、飲み手と己を傷付ける缶まで出る始末。
もう二度と味わえないのか。ヤケビールを飲んだくれる王子に何者かが囁きます。
「飲み過ぎはお身体に毒ですわ」
この優しい口当たり。宴の晩もそう言って、真夜中の鐘と共に去った缶が、開いた飲み口で微笑んでいます。
「あなたの銘柄は?」
「輸入ノンアルビールでございます」
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公開:23/11/04 17:24
クラフトビールコンテスト
アジア圏ではプルトップ缶が
現役の国もあるそうです。
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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