俺の酵母

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翔と付き合って三年、時々店員に横柄な口の利き方をするので、私は結婚を躊躇っていた。

ある時友達の勧めで小さなブルワリーに入った。
翔は、早々二杯目を飲み終え、店主を呼んだ。
「『俺の酵母』一つ」メニューの下の方を指さすと、店主の顔色が変わった。
「それは売りもんじゃねえよ。俺の酵母って書いてあんだろ。だから俺のなんだよ」
「……」二人とも意味が分からなかった。
「Orreが飲みたくて特別に作ってんだ」
「じゃあ何でメニューにあるんだ」
「価値の分かる奴だけに分けてやんのさ」
「意味分かんないんだけど」
「これを飲む資格があるか、Orrrreが決めるってこと」
「そんなに旨いのか」
「ああ、腰抜かすぞ。飲みたいか」
「はい」わあ、翔がはいって言った。
「しょうがねえ、分けてやっか」
「あざーす」翔が敬語!

翔が一口くれた麦酒の味はよく覚えてないけど、私は翔と結婚することにした。
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公開:23/10/31 21:25
更新:23/11/02 21:20

西邑昼夜( 川崎 )

何一つ実りませんが、作るプロセスを楽しんでいます。

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