おすそわけ

私には化け狸の友達がいる。
頭に葉っぱを乗せるだけで変化できる友達に私もその極意を習おうとした。
だが私には変化に使う葉っぱの見分けすらつかない…初歩中の初歩というそれを人間の私は理解できなかった。
だから私は友達から変化に使う葉っぱをお裾分けしてもらう。上等なものでなくていい。私では変化なんて到底できないのだから。
変化はできなくてもお裾分けされた葉っぱには使い道がある。
これを頭に乗せて「ドロン！」と唱えるとその場に煙を残し、逃げられる。社会人になった私は残業や飲み会に誘われる度に「ドロン！」と唱える。
その日もいつものように逃げ出したところで上司に捕まった。狸親父と名高い上司。どうやらその正体は化け狸だったようだ。
私に残業を押し付ける気満々の上司。残念。それは捕らぬ狸の皮算用。
もひとつ「ドロン！」と唱えてみると私の姿は丸太へと早変わり。
私の正体。それはどこにでもいる忍者である。