除霊師の仕事道具

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除霊師として仕事を始めて三年になる。
私には霊感がない。
だが、私の所属している会社で支給される除霊用の数珠があれば、霊感のない私でもこの仕事が可能なのである。
今日のお客様は地震でもないのにキッチンの家具が夜な夜な揺れ出してカタカタと耳障りな音を立てる現象に悩んでいた。
私は仕事道具の数珠を手に巻き付けて両手を合わせ、除霊のためのお経を唱える。
「もう大丈夫です。」
私は仕事の完了を顧客に告げる。
「ありがとうございます。今夜から安眠できることを願っとりますよ。」
家主は、寝不足で疲れた顔に微笑を浮かべる。
「どうぞ、一服なさってください。」
と言って家主は緑茶と菓子を差し出した後、ちょっと失礼、とトイレに向かった。
私は彼がトイレに行っている間に冷蔵庫の下の機械を回収した。
小型でありながら遠隔操作で周囲に振動を起こすことが可能な逸品である。
私の仕事に欠かせないもう一つの仕事道具だ。
ホラー
公開:23/10/31 09:50
更新:23/10/31 12:57

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