クラフトビール顔

「あんたの旦那ってビール顔ね」
ちょっと口の悪い友達が、ランチの締めにビールを注ぎながら言った。
醤油顔や塩顔なら知ってるけど、ビール顔は初めて聞いた。最近は調味料じゃなくて、お酒で例えるのが流行りなのかしら。
「ビア樽みたいに太ってるって事？」
「苦み走った好い男って事よ」
写真見せなきゃよかった。ヤケで一気する私に、彼女はからかい半分で『ごちそうさま』と手を合わせた。

「面白い友達じゃないか」
ヤケ酒第二段の晩酌中、お手製のつまみで私をなだめながら、旦那はまんざらでもなさげにのたまった。
「しいて言えばクラフトビール顔かな。万人受けしなさそうだし」
「私がマニアックだって事？」
「一人に伝われば十分だって事」
私のふくれっ面にチュッと乾杯して、『ごちそうさま』と照れ笑いの旦那。
よしてよ、せっかくのビールが甘くなっちゃうわ。
わざとすねてみせてから、酔っ払いみたいな赤い顔に返杯した。