旅する栞

私の栞は旅する栞。私が本を読まずにいると、栞は勝手に先を進んでしまいます。
まだそこまで読んでいないと栞を前のページに戻そうものなら、次に見た時は手品みたく先のページへと移動している。
どうやらこの栞、本の読み返しはしない派のようです。なので私も栞に合わせて、本を読み進めていました。
栞を変えようと思った事はありません。私は栞と一緒に読書を楽しんでいました。
とはいえ、歳を取ると読むペースも遅くなりますし、文字が霞んで見えなくなってきます。
私は徐々に本から離れてしまい、今はもう読まなくなってしまいました。読めない…と言った方が正しいかもしれません。
そんな私を置いて、栞は本を読み続けていたようです。
ボロボロになった栞はまるで本の旅人。その栞は今、私の手の中で休んでいます。
栞には凹凸があります。それは点字となっており、指でなぞると私の読みたかった本の内容を教えてくれるようになりました。