おすそわけ

公園のベンチの下で腹を空かせて蹲っている子猫を見つけた。
私は先程スーパーで購入したお刺身をその子猫におすそわけしてあげた。
ウチでは飼えないけど、見捨てる事もできない…だからせめてこれくらいはしてあげたかった。

「あの時は本当に助かりましたよ」
まさか１年後、立派な成猫になったあの時の子猫に声をかけられるとは思わなかった。
「これ、受け取って下さい。吾輩の気持ちです」
そう言って差し出されたのは小判だった。
まさか本当に猫に小判を貰う日が来ようとは…
でもまあ、猫が小判なんて持っていても使い道なんてないだろうから、ありがたく貰っておこう。
「ちなみに今の吾輩、CEOをやっております」
名刺も差し出された。名前とともに書かれた社名を見てみると、私の勤めている会社の親会社だった。
「今の吾輩、小判をたくさん稼いでおりますのでその一部を…おすそわけです」
本当に立派になったものだと感心した。