じゃないほう

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 「どういうことかね」
キャンペーンの結果報告を受け、社長が眉をしかめた。
「〇に入る文字を埋めて下記までご応募ください」という、ただ商品名を答えるだけの、ありがちなキャンペーンのはずだった。
 だが、蓋を開けてみれば、正解は2割を切っていたのである。
「色は申し分ないな」
「はい。SRM値で2以下の上品な黄金色を出すことに成功いたしました」
「苦味も十分だな」
「ギャップが大事ということで、苦味はIBU80越えです」
「香りも攻めたな」
「臭いものほど嗅ぎ直したくなる心理を突く。斬新です。」
「そして泡は」
「かなり抑えました。」
「見た目はシャンパンみたいだけど癖が強い。『騙されないで。シоン〇ンみたいなクラフトビール』うん。意図した通りだ」
「しかしながら8割以上の不正解の回答は全て『じゃないほう』でした」
「なぜだ」

 町の声
「やっぱり、シоン〇ンみたいだったからじゃねえかな」
公開:23/11/02 19:55

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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