クラフト……? ビールナッツ

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「おひとついかがです?」
列車で相席になった男が、つまみらしき袋の中身をポリポリ噛みながら勧めてきた。
「ミックスナッツですか。珍しい色と形ですね」
「ビールナッツ。クラフトビールの種ですが、そのまま食べても十分酔える」
酩酊には至らぬまでも、確かに十分酔っている。寄越された袋を覗き込み、ナッツと言われた物が極小のビールだと気付いた。瓶、缶、グラスにジョッキに樽まである。爪の先ほどのそれらを男は無造作に掴み出し、口へ放り込んでいるのだ。
「……メーカーや種類が違う様ですが、何種類も混ぜて悪酔いしませんか?」
そもそもビールはまだしも、容器はアルミやガラスや木だ。どう消化するのか怖くて訊けない。
「へーきへーき。こうして口の中でオリジナルのクラフトビールを造るのが、また美味いんですよ」

駄目だ、完全に悪酔いしている。
そしてそれはクラフトじゃなくブレンドでは。
やっぱり怖くて言えなかった。
その他
公開:23/11/02 00:39
クラフトビールコンテスト いや、ちゃんぽんだろ……

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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