クラフト……? ビールナッツ

4
3

「おひとついかがです?」
列車で相席になった男が、つまみらしき袋の中身をポリポリ噛みながら勧めてきた。
「ミックスナッツですか。珍しい色と形ですね」
「ビールナッツ。クラフトビールの種ですが、そのまま食べても十分酔える」
酩酊には至らぬまでも、確かに十分酔っている。寄越された袋を覗き込み、ナッツと言われた物が極小のビールだと気付いた。瓶、缶、グラスにジョッキに樽まである。爪の先ほどのそれらを男は無造作に掴み出し、口へ放り込んでいるのだ。
「……メーカーや種類が違う様ですが、何種類も混ぜて悪酔いしませんか?」
そもそもビールはまだしも、容器はアルミやガラスや木だ。どう消化するのか怖くて訊けない。
「へーきへーき。こうして口の中でオリジナルのクラフトビールを造るのが、また美味いんですよ」

駄目だ、完全に悪酔いしている。
そしてそれはクラフトじゃなくブレンドでは。
やっぱり怖くて言えなかった。
その他
公開:23/11/02 00:39
クラフトビールコンテスト いや、ちゃんぽんだろ……

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO

ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容