ウィッチ・クラフト

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 農場主に旅の少女は言う。
「いい畑だけど、じきココも汚染されるよ。良いの?」
 企業が遺伝子組換えと利権を濫用し、麦酒の自由な製造が困難になった時代。
「あんた魔女か? 俺は、クラフトは嫌いだ」
 遺伝子汚染されるホップに失われゆくフレーバー。この保全を目的に作られたのがインスタント・クラフト。そしてその製造技術者を、人々はウィッチと呼んだ。
 少女は毬花を一つもいだ。
「成分を調べても?」
「好きにしろ、今年で閉める農場だ」
「何故?」
「妻が、もう長くない。今年の仕込みを彼女は待てない」
「でも明日はまだ生きてるでしょ」
 翌日。少女はクラフトを用意していた。
「貴方のホップから作ってみたわ」
「言ったろ。嫌いなんだ」
「別に飲まなくたっていいわ。良いフレーバーだった。じゃあね」
 残された農場主は訝しみつつ、クラフトを口にした。
 鮮烈な印象に目を見開くと、彼は妻の名を呼んだ。
ファンタジー
公開:23/11/05 13:23
更新:23/11/05 13:31

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