時のビール

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『あの、この店の表の掲示板に主人の伝言を見つけたんですけど、まだ間に合いますか?』
「いらっしゃいませ。お待ちしていましたよ。まだ大丈夫です。こちらのメニューの中からお好きなのを選んでください」マスターはそう言って笑んだ。
そこには〈最初〉〈日常〉〈最後〉と表記してある。
『やっぱり最初の記念日に一緒に飲んだのがいいかな…』
その後数分待って出てきたクラフトビールの懐かしい香りに心がきゅっと音をたてた。
「ご主人様からこれ(ふたりの想い出ホップ)をお預かりしていてやさしく混ぜました」
一口飲んでその味に落涙する…。これでもう思い残すことはない。
私は深くお辞儀をし店を出ると、そこに悠然と流れている時の河に揺蕩う舟に乗り込んだ。
『あなた、旅立つ前にここに立ち寄ってくれていてありがとう』
十年前に事故で先立った主人にやっと逢える。
船頭さんはうんと頷くと天の国へゆっくりと舟を漕ぎだした──。
ファンタジー
公開:23/10/28 21:54
更新:23/11/18 00:40

ことのは もも。( 日本 関東 )

日本語が好き♡
18歳の頃から時々文章を書いています。
短い物語が好きです。
どれかひとつでも誰かの心に届きます様に☆
感想はいつでもお待ちしています!
宜しくお願い致します。

こちらでは2018年5月から書き始めて、2020年11月の時点で300作になりました。
これからもゆっくりですが、コツコツと書いていきたいと思います(*^^*)

2019年 プチコン新生活優秀賞受賞
2020年 DJ MARUKOME読めるカレー大賞特別賞受賞
2021年 ベルモニー縁コンテスト 入選

 

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