５本指のビールジョッキ

今日は彼女の誕生日。三度の飯より酒好きな彼女に俺はビールジョッキをプレゼントした。
「いいね～！アタシ専用のビールジョッキか。持ち手が５本指になってるから落としにくいし、この見た目なら間違う奴もいないだろう！」
彼女は上機嫌で持ち手の穴に左手の指を通し、サーバーから注がれたビールをグビグビと飲む。
「メリケンサックか？」
「酒もケンカもめっちゃ強そう！」
皆の感想を笑って流す彼女。
彼女の誕生日は行きつけの居酒屋で仲間と楽しむと決めている。
二人っきりで過ごしたいと思う気持ちもあるが皆と飲む酒も好きだし、こうして集まれる機会も社会人となった今では貴重だ。
友人の一人がビールジョッキの下から２つ目の穴が他の穴と違う事にふと気付く。
実はその部分、渡そうと思っていた婚約指輪を取り付けてある。
彼女もそれに気付いたのだろう。
顔を真っ赤にすると「今夜は酔うから、家まで送ってね…」と俺に呟いた。