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スーパーでの精算時は、ずっとレジの人の耳たぶを目で辿っている。その際は、視線と舌先を連動させるので、舌先はレジの人の耳たぶの襞を正確になぞることができる。カーブを感じ、左右からの圧迫を感じる。袋小路に入り込めば、軽自動車が狭い路地で切り返しをするように舌先が蠢く。作業が終わるまで、起点を変えて、幾度も幾度も繰り返す。そのうち、自分の上下の唇が耳たぶに触れている感覚がしてくる。耳たぶを唇で挟み込み、なお舌先でなぞる。自分の頭が耳たぶの襞のレールを進行する貨車のように動き始める。当然、湾曲する耳たぶの襞の通りに進行するため首の可動域だけでは走行不可能になる。必然的に背中を丸め腰を屈め膝を屈伸しなければならなくなる。いつしか自身が自分の口の中をジェットコースターのように疾駆しているような感覚に陥り、その舌先で体中を嘗め回しているかのような恍惚に…
3256円になります。
あ、ペイペイで。
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その他
公開:23/10/28 17:43
シリーズ「の男」
星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。
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