いろいろとギリギリのクラフトビール

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 『癖の強さが癖になる』
 が宣伝文句の荒野工房製クラフトビール『背高秋の泡立き〇んビール』は、いろいろとギリギリな、幻のビールである。
 何がどうギリギリなのか、説明できる範囲でご紹介すると、まず原材料は『背高泡立草』のみだ。ご存じの通り、この草は他の植物の発芽を妨げる毒をもっており、多量になると自家中毒をも引き起こす厄介な代物だが、これがなんともいえぬエグ味を醸し出す。この味を一度受け入れたら最後、やめられなくなること請け合いだ。
 そしてさらに特徴的なのは泡だ。広大な荒野一面を黄色に覆いつくして揺らめく光景そのままの、鮮やかな黄色の泡。泡とビールのおすすめの配分は8:2だ。もちろん、なるべく背の高いグラスで堪能していただきたい。
 味覚と視覚とくれば次は嗅覚。香りがまた独特の青臭さでビールの概念が吹き飛ぶこと請け合いだ。
 販売は秋のみ。どこで買えるかはここには書けない。悪しからず。
その他
公開:23/10/28 11:27

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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