ガラス絵馬

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「なんぢゃこりゃ!?」

俺がいつものように朝の散歩コースの神社をくぐったら、何と、見慣れた松の太い枝が、ぐるぐるととぐろを巻いていた。それも数本…まるで大蛇だ。

「誰がこんな罰当たりな…」
「僕だよ。」

振り返ると、いつの間にか一人の少年が立っていた。

「僕、絵描きを目指してるんだけど、面白い絵が描きたくなって…それで、この『ガラス絵馬』に大蛇のような松が絵描きたいって書いて、毎日手を合わせてたんだ。」

そしたら叶っちゃった、と嬉しそうに松を見上げる少年の手から大人げなく、俺は絵馬を取り上げた。

「これに書いた事は何だって叶うんだよな?だったら一攫千金で大金持ちに…」

我ながら厭らしい笑いが漏れる。と、次の瞬間、

パリン…

絵馬は粉々に砕け散った。

「その絵馬はね、神様の心が宿ってたんだよ。」

きっと、おじさんの心を見透かしたんだね…少年が悲しく呟いた。
その他
公開:23/10/29 23:14

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