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金曜日の夜11時。風呂上がりのフェイスパックのお供のビールを飲み干した。そんな至福のひと時は、部屋の隅に積みあがった洋服がゴソゴソ動いたことで唐突に終わりを迎えた。酔いが回り過ぎた?無かったことにしようと思ったけど、洋服はまだ動いている。重い腰を上げ、そろそろと洋服を持ち上げると漢字の「癒」が香水をぐびぐび飲んでいた。何の冗談?最近化粧品や食べ物が無くなっていたのはこれのせいなの?しばらく「癒」を見ていると、私にすり寄ってきた。そっと手に取るとひんやり冷たい。そのまま頬に当てると中からしゅわしゅわ音がする。よく見ると「疒」の一番上にプルタブがある。タブを手前に引くとカシュッという音ともに、さっきの香水とホップの匂いが漂ってきた。もしかして私の部屋にあったものを原料にしたビールなの?怖さはあるものの、「癒」の誘惑に勝てずに一口飲んでみた。思わず出た満足げな溜息が部屋に霧散していった。
その他
公開:23/10/29 18:01
更新:23/10/29 22:50

たかきだ ほむら( 夜と昼のあわいに )

べんきょうちゅう。

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