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思った事を言えない私。後輩に注意できずに悩んでいると、部長にバーに誘われた。会社から離れたいつものホテルではなく。
勧められたグラスに口をつける。
「苦いだろう?インディアペールエールと言うビールで、中でもこれは特別。苦味が苦言を引き出すんだ」
突然、私の舌から呪文のように苦言が湧き出てきた。苦いのに、爽やかだ。
「船旅でビールを腐らせないようホップを大量に入れた事が始まりさ。目的の為に苦くなる事も厭わなかったから出来たビールだよ」
その場凌ぎの甘さではいずれ腐ってしまう。
「苦言を呈するのも優しさだ。要は何が一番大切かだよ」
「そうですね」
妻とは別れる、なんて口当たりがいいだけの言葉にずるずると続けてしまった。その甘さを舌の苦味が断ち切っていく。決断の時。
「何が大切かわかりました。別れましょう」
突然の展開に苦い顔の部長と振り向いて歩き出す私。
ホップのせいか、その足取りは軽かった。
その他
公開:23/10/29 12:17
更新:23/10/30 23:02
IPA イギリスからインドへ長い船旅

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