クラフトビールのような男
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ぼくの粗末なアパートで、3回目の交際記念日を祝っていたときだ。「あんたはこのクラフトビールみたいな男ね」と彼女が切り出した。
誉め言葉ではないのだろう。彼女の表情がそう物語っている。
「だいたいね、あんたはこのビールと同じでこだわりが強すぎるのよ。融通が利かなくて損ばかりして」
彼女は上手く世間を渡り歩き、IT関係の一流企業の正社員に納まっている。劇団俳優のぼくは、いまだにアルバイトとの掛け持ち。
「このビールを見てみなさい。世間の流行なんて完全に無視。自分たちが作りたいように作る。世間など無視。ついてきてくれるファンのためだけに、中身も外観もこだわる」
彼女は三本目の缶を開けた。ラベルに物語が書かれている不思議なビールだ。
「だからこそ、ファンを止められないんだけどね。ねえ、未来の個性派俳優さん」
彼女の指が缶のふちから離れる。ほんのり赤く染まったその指を、ぼくはゆっくりと包み込んだ。
誉め言葉ではないのだろう。彼女の表情がそう物語っている。
「だいたいね、あんたはこのビールと同じでこだわりが強すぎるのよ。融通が利かなくて損ばかりして」
彼女は上手く世間を渡り歩き、IT関係の一流企業の正社員に納まっている。劇団俳優のぼくは、いまだにアルバイトとの掛け持ち。
「このビールを見てみなさい。世間の流行なんて完全に無視。自分たちが作りたいように作る。世間など無視。ついてきてくれるファンのためだけに、中身も外観もこだわる」
彼女は三本目の缶を開けた。ラベルに物語が書かれている不思議なビールだ。
「だからこそ、ファンを止められないんだけどね。ねえ、未来の個性派俳優さん」
彼女の指が缶のふちから離れる。ほんのり赤く染まったその指を、ぼくはゆっくりと包み込んだ。
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公開:23/10/25 17:13
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