人・魚

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「まだまだ記事のネタはありますよ」

 そう連れてこられたのは酒蔵で、茶色く濁った巨大水槽に、私の視線は奪われた。

「あぁ、これですか?ぜーんぶ素なんです、ビールのね」

 手渡されたのは、ソレで作られたビールだ。コップの中を消えずに舞っている気泡が印象的で、「人魚の様だ」と呟く。

「そう!見る目ありますね〜、その泡、実は消えないんです!まるで泡になった人魚のようでしょ?だ•か•ら、名前も"マーメイド"というビールなんですよ」
「人魚、会ってみたいですね」

 社長はコチラを見てニヤリと笑う。

 私も静かに笑い、コップに視線を落とすと、さっきまで無かった魚の鱗が浮かんでいた。

「案外身近に居るかもしれませんよ?」

 一瞬だが、水槽の底で手足の生えた人影が沢山蠢いていたような……それも、私に警告するように……

 不意に頬に違和感を感じ、触ってみる。と

--なに、これ--
ホラー
公開:23/10/24 23:58
更新:23/10/26 20:30

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