仕立て屋と王様と愚か者

「王様。こちら、愚か者には見えない素材で作った服でございます。どうです？美しいでしょう？」

『仕立て屋よ。それ、愚か者には見えないって本当？』

「はい。本当でございます。王様のように賢く気高い方にしか見えない服でございます！」

『仕立て屋よ。それはアカン。それではその服が見えない者は愚か者だと言っているようなものではないか。それって差別じゃね？王として国民差別はさすがにダメじゃね？』

「…王様。言われてみれば確かにそうですね。私が間違っていました」

『時に仕立て屋よ。今、お主にその服は見えておるか？』

「ええ。見えておりますが何か？」

『差別に気付かぬ愚か者にその服は見えておるのか…それってどうなん？素材、大丈夫？』

「王様！たった今！たった今見えなくなりました！服はどこでしょう？どこにありますか？」

『すまんな仕立て屋。儂は愚王。実のところ最初から見えておらんかったよ』