おすそわけ

美術館に訪れた私は美女の絵の前に佇んでいた。
百年間も変わらぬ美しさを保つ美女画。羨ましい…私も今の若さを、美しさを百年保つものにしたい…
「あなたの若さと美しさを私に分けてくれない？」
気が付けば、そう口走っていた。
『いいわよ。私の若さと美しさ、おすそわけしてあげる。代わりにあなたの老いを私に分けてくれない？』
絵の中の美女が私に答えた。
「老い？こんなものが欲しいのか？いいとも！くれてやる！」
『交渉成立ね。私の若さと美しさ、あなたにあげる』
こうして私は百年保つ若さと美しさを手に入れた。
美女画はその日を境に徐々に老け込んでいく。その姿までも美しいとさらに多くの人を惹きつけた。
百年の若さと美しさを手に入れた私は今日も絵画みたく痛む肌に苦戦している。この前なんて頬にヒビが入った。ボロボロと皮膚が崩れ落ちる。
おすそ分けしてもらった若さと美しさは毎日修復作業を必要とするものだった。