おすそわけ

私には犯罪者の才能がある。一を見て、十は犯罪を思いつく。
そのどれもが実行可能なものばかり。自分の才能が怖くなる。謙遜などではなく、本気だ。
だから私は犯罪者の才能に溺れぬよう、お裾分けしている。そんなものお裾分けして大丈夫かって？ああ、大丈夫さ。
もちろん、ものがものだけに人は選んでいる。悪人に犯罪者の才能なんて絶対に渡しちゃいけないからね。
私が犯罪者の才能をお裾分けしているのは馬鹿真面目な人さ。そうした人は嘘が蔓延する世界に息苦しさを感じているはずだ。そこで私の出番である。
犯罪者の才能を少しだけお裾分けする。少しのズルを憶えるだけでこの世はかなり生きやすくなる。
でもズルは甘い蜜のようなもの…与えすぎには要注意。
私だって、犯罪者の才能をお裾分けした相手を捕まえたくないからね。
私の仕事、それは刑事である。犯罪者の才能があるからこそ、捕まえられるのさ。これもまた、ズルの一種である。