ナナツボシのおくりもの

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母が死んだ。
救急車で病院に運ばれた。
「ナナツボシ…」最期の言葉だった。
私は母を避けていた。
母が嫌いだった。
私が幼ない頃、母は父と別れた。
母にとって私は、
希望の「星」だった。
稼ぎ頭のスター。
でも、荷が重すぎた。
だからずっと反発して生きてきた。
売り言葉に買い言葉で
大げんかをして家を出た。

それから20年。
こんなに早く別れの日が来るなら、
一緒に旅行すれば良かった。
九州出身の母は、
クルーズトレインに乗るのが夢だった。
携帯の待ち受けは「ななつ星」だった。

遺品整理で、実家に帰った。
玄関に「置き配」の段ボール。
開封する。

北海道の新米、ななつぼしだった。
そう、思い出した。
自家製梅干しと
炊き立てのななつぼしで握る
母のおむすびは、私の大好物なのだ。

いつ帰ってくるかもわからない
娘のために母は新米を頼んでいた。
母さん、ごめん。

そして、ありがとう。
ファンタジー
公開:23/10/23 09:14
更新:23/10/23 10:12

笠森まき( 東京 )

田丸さんのご本を読んでショートショートが大好きになりました。楽しくて、毎日がワクワクしています。私にとってショートショートは「読むサプリ」、ほっ、となればうれしいです。読んでくださって、ありがとうございます。

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