ビールマイスターの味

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「一度ハマったら戻れない、唯一無二のビール……飲んでみたいかい?」
「ははぁん。俗にいう『沼る』ってやつかい?」
「沼なんてもんじゃないさ。底なしだぜ」
「ビールマイスターのこの僕に、そこまで自信満々にすすめてくれるって事は……そうとう通好みの味なんだな。最近流行りのクラフトビールと言うやつかな」
「そうさ、四国のある店が開発した『波のビール』シリーズの最高傑作さ」
 そう言って男はビールマイスターの前に冷えたグラスを置くと、冷蔵庫からビールを取り出し、トクトクと黄金色の液体を注いだ。
「ふぅん。なんだい、香りは普通のビールと変わりないな……おや?」
 ビールの泡は渦潮の如く荒く渦巻いていた。
「あんまり顔を近づけちゃ危ないぜ」
「何だって……? アッ!」
 ビールマイスターは瞬く間に渦潮の中にぐるぐると飲み込まれ、泡の中に消えた。
 残された男は渦巻く泡ごとビールを一息に飲み干した。
その他
公開:23/10/22 20:22

椿あやか( 猫町。 )

【椿あやか】(旧PN:AYAKA) 
◆Twitter:@ayaka_nyaa5

◆第18回坊っちゃん文学賞大賞受賞
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◆【他サイト】
【note】400字以上の作品や日常報告など
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