シネマ　上

友人と映画を見た。人気作家が手掛けた作品だと噂されていたものだから、大きな期待を抱いていた。しかし、それは思いの外、酷くつまらないものだった。流れる映像の演出は凝っていて、どれも素晴らしく臨場感があったというのに、内容がまるでだめだった。一人の友人と映画を見に行った男が、その映画館で惨殺されるという筋書きだった。
「どう思う、これ？」
友人に例の映画のコンパクトディスクを差し出す。案の定、友人は眉を顰めて、ああ、それか、と唸るような声で言った。
「それ、演出は凄く似ていて、よかったんだけどさあ」
＿似ていて？
私は友人の言葉に違和感を覚えた。似ていて、とはなんだろうか。聞き返せば、焦った友人は私に弁明したが、それがまた墓穴を掘った。
「か、監督の次回作に似ててって話だよ！」
やはり友人は嘘をつくのが下手らしい。幼少の頃から変わらぬ、正々堂々とした性格が故に、彼は嘘をつくのが下手なのだ。