ポケットの手紙

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高校の卒業式前日に親友と喧嘩をした。理由は些細なものだったと思う。
ただ、仲直りするには僕らが共に過ごす時間は短すぎた。

お互いに別々の道に進み、新しい出逢いも増え彼を思い出す事も減っていった。
時が経つにつれ、大切な思い出も少しづつ、砂時計の様に、サラサラと流れていった。

彼のことを思い出したのは成人式の案内を目にした時だった。
…きっと同じ会場で会える。
もしかしたら仲直り出来るかもしれない。
でも、もう口に出してごめんなんて、言えない。
そう思って僕は手紙を書いた。一言ごめんと。
絶対に渡すと決め、スーツのポケットに手紙を忍ばせた。


しかし、成人式の1週間前に彼は、亡くなった。突然の事で正気ではいられなかった。

もう一度会えたのは、棺の中の彼とだった。
優しい顔して眠ってる君に
「ごめん」
と、一言。

込み上げる涙とともに、ポケットの手紙を、そっと君の胸に置いた。
青春
公開:23/10/24 11:07
更新:23/10/24 11:38

七尾瞬

初めまして。七尾瞬と申します。
小説を読むのも書くのも好きで、今回、ショートショートに挑戦したいと思い、登録しました!
400字という限られた文字数の中でどれだけ表現出来るか不安もありますが、頑張りますので宜しくお願いします!

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