あなたのビール

友達から聞いてきたんだけど、この店では個人個人にあわせたクラフトビールをだしてくれるんだってね。
いえ、おつくりするんです。
え、つくるって。
いわばレデイメードのビールです。これにご記入を。
まるで病院の、問診票のようなものをてわたされた。そこには身長から体重、血圧の値、〇×方式の性格テスト、人生観から好きなたべものまでぎっしり20項目書き込むようになっていた。
それをわたしてからそんなに時間がたっていないはずなのに、どうぞこれがあなたのクラフトビールですとやや黄色味がかった瓶をマスターはさしだした。どうやら簡単にできたようだ。その一杯目をのむときわたしは、世界にひとつしかないじぶんのビールだと、胸が高鳴るのをどうすることもできなかった。まずはひとくち、泡立つ液体を舌のうえにのせた。みょうにあまったるい、たよりない味がした。まさしくこれこそ、わたしの性格どおりのクラフトビールといえた。