おすそわけ

今日、小松君が私に辞表を出してきた。
彼は真面目で、誰からも頼られる存在。上司である私も彼を頼る事が多々ある。正直、辞めてほしくはない…
だが、彼は病気を抱えている。さすがに会社の保険だけでそれを賄う事はできず、治療に専念するとなると退職しかない。
はぁ…とため息を吐き、渡された辞表を見つめる。
その時だ。小松君の同僚の中林君が有給申請をしてきた。おいおい…高田君、君もか。横山君に川上君…君達も有給申請か？
続々と私に有給申請をしてくる部下達。その休みを見て、私は違和感を感じた。
全員の有給申請を繋げてみると、１年丸々休みになる。これは一体…
「部長。その有給申請、小松に使って下さい。俺達の仕事に小松は必要不可欠なんです。あいつを絶対に、辞めさせないでください」
部下達の懇願に私はさっきと違う色のため息を吐いた。
この有給申請、全員分を認めるには私の有給も小松君におすそ分けをしてからだな。