楽しんだ者こそ

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表彰台にあがった3人はハイタッチをした。
3位はビターな輝きを放つ赤銅のスタウト。2位は白銀のヴァイツェン、そして1位には黄金のIPAといった具合にメダルよろしくグラスビールが授与されると3人は乾杯をした。
老舗パブ『プハーヒック』では4日に1度、麦酒競技で盛り上がる。いかに美味そうにビールを味わうかを競う競技なのだが
表情、飲み干した後の溜息、口周りについた泡の美しさなど、几帳面なマスターが公正に審議する。
表彰台を独占するのは決まって3人の常連客だ。
「悪いが俺より美味く飲む奴は何処を探しても居ないだろうな」と一人が調子づくと「こればっかりは若い奴には負けん。年季が違うってもんよ」と追随した。
マスターは近づいてくる若者を見据えながら言う。
「ここで競う勝敗なんてオマケさ。本当の勝者は…」
「あの…これ次エントリーしたいんすけど」
3人は笑顔で示し合わせた。「いいね若造。まずは乾杯だ」
ファンタジー
公開:23/10/19 11:20
更新:23/10/19 15:11

吉田図工( 日本 )

まずは自分が楽しむこと。

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